以下、ネタバレを含みます。

タイトルと、芥川賞受賞というキャッチーな部分に惹かれてamazonで本書を購入し、先ほど読み終わりました。

これは、普通じゃない人が普通の世界で生きていく話です。

読んでいて、特に文章表現が優れているわけでも、ストーリーに何か盛り上がりがあるわけでも、凄く印象的なシーンがあるわけでもありません。

いきなり主人公の幼少期の変なエピソードが出てきて、主人公は普通じゃないと、あまり深さも感じない説明が入ります。
普通じゃない人が普通の世界で生きていく話ですというのが何の工夫もなく説明されていく。

「何で芥川賞をこの作品が取ったのだろう?」

と、多くの方が思ったと思いますし、自分も何度も思いました。

でも読み終わると、芥川賞を取るべき小説だったのかな、と思います。

通常、普通じゃない人が普通の世界で生きていくというようなテーマの話だと、
よくあるのは、社会と、社会に溶け込めないない人という2つの側面で話が進みます。

コンビニのアルバイトというのは、社会に溶け込めているかいないのかという見方をしたときに、微妙ですね。

そこで主人公は18年間も働き続けている。他に仕事もしようとしたけれど、コンビニアルバイト以外はできない。

よくある話だと、社会に溶け込めなくて引きこもっていたりするのですが、
本作では主人公はコンビニアルバイトとして週5日勤務で模範的に働いている。

社会に溶け込めているのかいないのか、実に微妙なんですね。

本作では社会に溶け込めないという、従来の基準で生きているキャラクターも出てきて、何故か主人公の部屋で一緒に暮らし始めます。
仕事もせずに主人公からご飯をもらって生きている、いわゆるヒモ状態です。

そんな2人を心配して、社会に溶け込めている主人公の妹が説教しに来るのですが
従来の基準の社会に溶け込めないヒモ男は説教する妹とまともに会話ができるのですが、
コンビニアルバイトを18年続けている主人公は説教する妹とまともに会話にならなくて、妹は泣き出してしまうんですね。

結局、主人公はコンビニをやめてヒモ男によって就職させられそうになります。
ヒモ男からしたら、社会に溶け込むか、溶け込めないかの世界で生きているので、コンビニで模範的に18年間働き続けてきた主人公は社会に溶け込めているのです。
ですから就職して待遇のいい職場に行った方がいいとでも思ったのでしょう。

ですが結局、就職面接に行く途中に寄ったコンビニで主人公は店内の様子を見て勝手に体が動き出し、
「私はコンビニ店員になるために生まれてきた」
というような訳の分からない理由で就職面接に行かない。

社会に溶け込めるか、溶け込めないかという2つの側面だったところに、3つ目の側面が出来たんです。

結局、社会に溶け込めている妹も、社会に溶け込めていないヒモ男も、主人公と心を通わせられないで離れていってしまうんですね。

社会に溶け込める、溶け込めない、という価値観の世界に、3つ目の“微妙”という価値観を作ってしまった本書は、
今までにそういう価値観を描いた作品があるのか知りませんが、
もしなかったとしたら、芥川賞に値する発見だったのだと思います。

コンビニ人間 [ 村田沙耶香 ]
コンビニ人間 [ 村田沙耶香 ]