三体、素晴らしい小説で、久しぶりに時間を忘れて没頭しました。
帯に書かれていた、オバマ前大統領やザッカーバーグも愛読しているという評価にも納得でした。
だけど、だけどですよ、「三体2黒暗森林」のラストはちょっと気になるんです。
※以下、ネタバレ含みます
■智子(ソフォン)はルオジーの計画にどうして気付けなかったのか…?
(1)腕時計型の送信機の作成とルオ・ジーがそれを装備する時
(2)三体世界の座標画像を送信するための仕掛けを設置する時
(3)水素爆弾の爆発と画像の送信を連携させる仕組みを作るとき
上記の3点はいくらウォールフェイサーの権限があろうとも、ソフォンの目から逃れて秘密裏に進めるのは無理ではないでしょうか。
(1)の腕時計型の送信機については、ソフォンを通じて「軽視していた」と伝えられていたので、気付いていたけれど軽視したということになっています。
ううん、これおかしいですね。
無意味な計画で現実逃避をしてきるはずのルオ・ジーが、作戦実行のために自分の命を腕時計型の送信機を作らせるなんて、不自然でしかありません。いくら駆け引きができない三体人でも、その不自然さには気付かなかったのでしょうか…?
(2)ルオ・ジーが死んでしまうと水素爆弾が爆発して、三体世界の座標画像を宇宙に送信する仕組みをこっそり作っていたようです。
いやいやいや、これ、何でソフォンを通じて見れなかったのでしょうか…?
ルオジーはどんな手を使って、画像の作成と、その仕組みをソフォンから逃れて進められたのでしょう。
一人では無理なので協力者がいますよね、こんな高度なことをソフォンから逃れて出来るなら、そもそもウォールフェイサー計画が必要ないのでは?ちょっと考えてみても、絶対無理じゃないでしょうか。
(3)水素爆弾の爆発と画像の送信を連携させる仕組みですが、そもそも(2)がおかしいのですが、百歩譲って(2)の画像を宇宙に送信する仕掛けを、ソフォンの目を逃れて設置できたとしても、それを水素爆弾の爆発と連携させるためにはさらなる開発が必要になります。
ソフォンはどうしてこんな重要な仕掛けを見逃したのでしょうか…?
ソフォンの監視は絶対という設定はどこへ行ってしまったのでしょうか?
誰かこの矛盾の答えを教えてください…!
■レイ・ディアスの計画は悪くなかったのでは?
4人のうちの1人のウォールフェイサーであるレイ・ディアスの計画も、ルオ・ジーの計画と近いものでした。
ざっくり言うと、水星で水素爆弾を爆発させて、その連鎖で地球も崩壊させてしまうことを交渉材料に、三体世界に降伏を迫るという計画です。(難しい内容なので間違ってたらすみません…。)
ですが、この計画は三体世界の主は気にかけていませんでした。
地球を崩壊させてしまうということは、滅びゆく三体世界にとっての唯一の移住先がなくなってしまうのだから物凄く重要だと思うんですけどね。
だけどこの計画は、必要な水素爆弾の量が、三体艦隊の到着までに用意できないであろうことが作中で言及されていたため、気にかけていなかったことが推測されます。
■三体文明は三つの恒星に呑まれるから、本来は帰れないのでは?
ルオ・ジーの矛盾だらけの計画に何故かソフォンが気付けずに、相打ちに持ち込まれそうになった三体世界はあっさりと引き上げます。
これも最初に読んだ時に少し違和感がありました。
というのも、三体世界は三つの恒星に呑まれるから、背水の陣で地球に向かっているはずなんです。
地球ごと居場所を他の星に教えると脅迫されたとしても、行くも地獄、引くも地獄なはず。
生存が第一欲求なのなら、尚更簡単には引けないのではないかと思うのです。
他の文明に居場所がばれて滅ぼされるよりは、恒星に呑まれる前に回避する方法を見つける可能性とかにかける方がまだマシ、ということでしょうか。
生存が第一欲求であるなら、このまま進むか戻るかは究極の選択になると思うんですよね。あっさり戻ったけど、三体世界の人たちはどうなるのでしょうか。生存が第一欲求という公理と矛盾するような気もします…。
■実はルオ・ジーの駆け引きで嘘だったのでは?
レイ・ディアスの腕時計の仕掛けは全部嘘でした。ルオ・ジーも同様に水素爆弾の爆発で三体世界の場所を宇宙中に送るという計画は嘘だったのではないでしょうか?三体人は作中でも、嘘が分からずに駆け引きが苦手という描写がありました。「実は嘘でした」という話だと妙に納得感があります。
ですが、もし全てレイ・ディアスの腕時計の仕掛けのように嘘だったとしたら、三体人はソフォンで監視しているのだから、それは見抜かれますよね。三体艦隊が引き返したのだから、ルオ・ジーの計画は嘘ではなかったということが証明されていると思うのです。
そう考えていくと、やはりソフォンがどうして、ルオ・ジーが準備を進めていた三体世界の画像を宇宙に送信する仕掛けに気付けなかったのかが矛盾するような気がします。
やっぱり、ソフォンに監視されている設定が最後だけおかしなことになっていますよね。
気付いたとしても阻止する方法がなかった可能性はありますでしょうか。
ですが、ルオ・ジーの計画に気付いた時点で水滴を起動させて破壊することもできそうですので、それはないような気がします。
この矛盾が三体3で回収されるのなら素敵なのですが、どうなんですかね…。
考察やご意見、遠慮なく教えてください。
コメント
コメント一覧 (2)
三体人はすでにルオジーの呪文の効果をその時にすでに理解していました。なので、呪文を放つその時には水滴たちを飛ばし、初手で太陽反射を使った宇宙送信を無効化しました。
しかし、三体人が地球に到着するより遥か前にルオジーは自分の命を賭けた自動呪文送信装置を完成させたので、三体人は交渉に乗るしかありませんでした。
智子は監視および極小世界(量子)の世界では妨害ができても、人間が物を作るマクロな世界では妨害により止めることはできません。まぁ、所詮人間が作るものなんて気にするほどでもないという評価なのだと思います。(あれだけの規模の宇宙軍を作るのもスルーしてた訳で)
技術のブレイクスルーさえ止めておけば技術爆発は抑えられるということだと思います。
ETOもすでに切っているので、物理的に亡き者にするのも、ルオジーが工作に入った時点では完全な防御体制の中で進めたと思うので、遥か遠い位置にいる三体人には結局無理だったのだと思います。
そして、本当にルオジーは宇宙の公理に気付いていた。三体人は、すでに知っていた(1)~(3)の繋がりがルオジーの手にあることを知り、自らの生存を優先する第一公理に従う事しかできなくなりました。
僕もここは読んでいて気になったのですが、ソフォンは脳の中身を監視できないので、以下のようにすれば三体世界が見落とす事はあり得ると思いました。
1. 三体世界の座標情報を全て記憶する
これは特に作戦の初期にルオジーがやっていても違和感ないと思います。
2. 相応の期間を置き、関係ない別のいくつかの作戦らしきことをフェイクとして挟む
3. 記憶していた座標を送信できる配置を自力で検討する
ご指摘では、ここの部分を外部のコンピュータでやっているという想定をされているのだと思います。
しかし、ルオジーは相当頭がいいので、これくらいは頑張れば自力でやることは一応可能なのではないでしょうか。
それまでの行動で、単に独善的な美学に基づく行動を取っているように店かければ、単に配置を自分の美学に基づいて検討しているかのように誤読させることは不可能ではないように思いました。
もちろんかなり難しいとは思いますが、それだけの事をやってのけたということもまたルオジーが救世主たる所以かなと。