味方に主人公より格上の仲間がいるからおもしろい

ヤングジャンプにて連載中の漫画キングダムは、現在休まずに連載している漫画の中で最もおもしろい漫画だと思います。

間違いなく漫画史に残る凄い漫画「キングダム」が、なぜおもしろいのかを考察していこうと思います。

キングダム 1 (ヤングジャンプコミックスDIGITAL)
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■5巻まではそこまでおもしろくない普通の少年漫画


キングダム


キングダムの舞台は、紀元前245年の中国です。
田舎の戦争孤児で奴隷のような生活を送っていた主人公の信が、天下の大将軍を目指して戦い成長していく、というのが大まかなストーリーです。

これだけ読むと、少年漫画によくある、未熟な主人公が強敵と戦っていって成長して強くなっていく、という使い古されたストーリーパターンになるので、新鮮味がないように思えます。

実際、キングダムも5巻まではそんな感じで進んでいきます。

僕は正直、この段階で読むのをやめようかと何度か思いました。

5巻までの未熟な主人公が強敵と戦っていって成長して強くなっていくというストーリーパターンは、まるでドラゴンボールですね。
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■6巻からは個人の戦いから軍の戦いに

ドラゴンボールのように、信の個人の戦いが描かれていたキングダムですが、6巻からそれは変わります。

主人公の個人の戦いから、数万人規模の軍の戦いが描かれるようになるのです。
主人公は、軍という社会の中に所属して戦い、軍の中で成長していくのです。

ここから、この漫画は一気におもしろくなります。

信は最初は部下もいない一歩兵だったのですが、軍の中で功績を上げて百人将、千人将、と出世していくのです。

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5巻までの主人公が強い敵を倒して成長していくドラゴンボール的なストーリーから、自分の属する組織の中で成長して出世していく、まるで課長から社長に出世していく島耕作的な要素が追加されたのです。

出世していくにつれて、部下が多くなります。

部下の数に応じて対応を変える必要があったり、状況に応じてどのように鼓舞していくかだったりなど、組織の中でどのようにふるまうべきかも教えてくれる漫画です。

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千人隊となって、千人を鼓舞する信


■キングダムの本当のおもしろさは、スラムダンク的なストーリー展開にある





この漫画の本当のおもしろさは、実は上記で説明した主人公の成長物語とは別のところにあります。

強い敵や困難な状況に立ち向かうために未熟な主人公が成長していく、というのは昔からよくある漫画の王道ストーリーです。

ドラゴンボールをはじめとする王道ストーリーでは、主人公は個人で戦う場合が多く、主人公より強いキャラクターは相手側にいて、この強い相手を倒すために主人公が成長していくという流れです。

キングダムがこの王道ストーリーと異なるところは、強い敵や困難な状況に対して、それらを熟知した格上のキャラクターと一緒に主人公が戦い、それにより成長していく、というストーリーなところです。

これは、井上雄彦の漫画「スラムダンク」が近いのではないでしょうか。
主人公の桜木花道のチームには、赤木や流川など、既に高校トップクラスの力を持ったキャラクターがいます。

バスケット素人の桜木が主人公であるがために、赤木や流川の凄さが際立ち、そんな赤木や流川を苦しめる敵キャラクターの凄さにも説得力が増すのです。

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主人公よりも格上のキャラクターが仲間にいて一緒に戦うというパターンは、他には甲斐谷忍の漫画「ライアーゲーム」もそうですね。

桜木にとって流川が目標であるように、信の最終目標である天下の大将軍は味方である王騎将軍でした。


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キングダム屈指の名シーン 「天下の大将軍ですよ」

目標とする強さを持った者が相手にいるのなら、その相手を倒すために強くなって戦う、というシンプルなストーリーになりますが、
目標とするキャラクターが味方にいることにより、物語に深みが出ているのです。

主人公がまだ成長過程にいるからこそ、将軍となっている味方のキャラクター達の凄さが際立ち、そんな味方キャラクターを苦しめる敵キャラクターの凄さにも説得力が増すのです。

キングダムは間違いなく歴史に残る物凄い漫画です。

序盤だけ見て読むのをやめた方は、頑張って6巻まで読み進めてみてください。寝不足になること間違いなしです。



キングダム 1-43巻セット [ 原泰久 ]
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